注文住宅とは何か。

                                                                            凪工房がお送りするスペシャル対談

                                                               はじめは、東京千葉で活躍するのハーミットクラブ建築設計。

 

                                                                分離発注を通して、本物の注文住宅を考える。

 

                                                                ハーミットクラブ一級建築士事務所→HDA

                                                               東京、千葉を中心に活動する河野、齋藤の二名の建築家


                                                                凪工房芳賀氏→

 


工務店が建てる注文住宅と、建築家が設計する注文住宅の違い

  • HDA

注文住宅というのは、どこでも見受けられるキャッチフレーズです。注文住宅の定義を考えると、とても深い話になってしまいますが、今一度芳賀さんと話してみたいと思いました。


確かにそうですね。一般的であるがゆえに難しい言葉でもあります。
まず、一般的には工務店いう注文住宅とは、作りやすさに重点をおいています。どういう事かと言うと、どれだけ作る作業に手間がかからないかという事です。これはなぜかと言うと、コストパフォーマンスを無意識で目指しているところにあります。
作りやすさ=コストパフォーマンス=工務店

一方建築家は、お施主さんのイメージを具現化する事に重きを置いています。どうやって、どのように住まいに住むか。想い、イメージ、感覚、知識を総動員して計画を練るわけです。
想いの具現化=0からの設計=建築家 

 どっちがいいというわけではなく、住まいを考えるスタートが違っています。

  • HDA

なるほどですね。住まいや建築に対するスタンスの違いは大きいかもしれません。ですから、どっちを否定するわけでもなく、お施主さんに会った形で住まいを作ることが注文住宅の秘訣だと思います。私のお施主様は、住まいへのこだわりや、想いがとても強くさらに、一回で計画が決まるという事はなかったので、そういうお施主さんは、建築家の方があっているかもしれませんね。でも、工務店、建築家それぞれ、特徴があると思います。

工務店ですと、工務店の色がかなり固定化されてしまいます。そういった特徴を強調していればいいですが、中途半端な工務店さんだと、ハウスメーカーの真似事みたいになってしまう事も多々あるように思えます。建築デザイン、計画的な心配はあると思います。

建築家ですと、やはりコストですかね。一般的な御施主さんが思ってしまう心配事1位のような気がします。凄くかっこいいものがあるでも、高そう、私達では買えないかな。設計料も高いような気がする。こういったお金に絡む心配は工務店より大きいと思います

そうですね。建築家の心配事は、やはりコストもあると思いますが、要望を聞いてもらえるかと言う心配もあると思います。建築家と言うのは想像が膨らみすぎると、住まいとしての現実を帯びないというような事もあり、一般の方が依頼をすると、こっちの意見をくみ取ってくれないと思ってしまう事もあると思います。芸術家=汲み取らない

一方工務店は、作り方からスタートしているため、工務店同志でもスタイルが似てきてしまい、それがカラーと言えばカラーだけども、お施主さんにとってオンリーワンではないと思っています。


  • HDA

ハウスメーカーでも、注文住宅と言うけども、フルオーダーではないですね。これはモノづくりの宿命なのですが、同じものを何度も作ることはコストが落ちて、企業体として成り立ちやすい。注文住宅を、規格化するという事は、ハウスメーカーの十八番です。でも、規格化することで注文住宅ではなく、セミセミオーダーというくらいまで考えを落としていると思います。

ハウスメーカーは、ハーミットさんが言うように、規格化しています。私は、ハウスメーカーはパズルだと思っています。あるパイの中で入れ替えを密に行っています。工業化住宅と言うのはルールが明確化され、多すぎるのです。その為注文住宅とは言ってはいけないのかもしれません。

  • HDA

私も同感です。コスト削減のための規格化であれば、それは、オーダー品にはなりません。私が思うに、住宅は家族の数だけ生活種類があるので、その中で規格化することは、モデル家族を決めてそこに生活を押し込んでいるだけだと思います。コンピューター上でシステムを組んで、そのソフトを使うのであればわかるのですが、システムの組み方が人それぞれなのです。だから毎回お施主さんにお会いして設計を進めると新しい事の発見ばかりです。既存のシステムで処理しようとするのではなく、システムを作り上げることが注文住宅だと思います

 


注文住宅の選び方

 

注文住宅の定義にもよりますが、やっぱり、工務店やハウスメーカー、建築家は定義がそもそも違うような気がします。

様々なお施主さんをお会いした中で、ハウスメーカーを、選ばれる方の共通事項は、大手と言う名の安心


工務店を選ばれる方は、
地場と言う安心感、代々そこで建てているというつながりなどです。を求めています。

建築家を選ばれる方は自分のこだわりのある方、住まいを作るという事を楽しみたい方などです。

  • HDA

家づくりで、安心感というのは、価格と同じくらいプライオリティーが高いような気がします。

昔、私が勤めていたころ良く耳にしたのが、メーカーさんで建てた人でも、工務店で建てた人でも、実は、建築家に頼みたかったという人が多かったです工期だとか、縁故だとか、予算だとか、様々な理由で断念した人は本当に多かったです。

  • HDA

建築家は、最近は多くなってきましたがそれでも一般的ではありません。まだまだ特殊解の域を脱していないですね。できれば、もっと選択肢の一つとして大きく出てほしいと思っています。

ところで芳賀さんの分離発注の出会いはどのような経緯でしたか?

 


分離発注の出会い

先ほどもお話ししましたが、建築家の住宅で一番不安なところは予算ですね。
予算が不安、アイディアひとつで、手に届くような値段でできる、建築家の多くは、施工の知識を駆使して空間を提供できるはずなのです。私の場合、施工会社にもいたので、トータルなバランスを良く考えています。例えば総タイル張は良いかもしれないけども、別のデザイン手段で解消できることもあるはずなんです。
べニア張りの家でも、素晴らしい家はあります。
価値観の創出を目指す住まいを提案したい。お客さんはやはり住まいの知識が少ないので、私の知識を参考により良い住まいにしてもらいたいと思っています。それには、やはり工事にも携わる必要があると考えています。

そういった考えを持っていた時に分離発注に出会いました。
そもそも、良い住まいが作れれば、手段は何でもよいと。
考えた人の意図がちゃんと伝わるようにするには、設計した人の意図が、現場に反映されなければならない。
それが唯一できて、迷惑を掛けない保障体系があったのが、オープンシステムイエヒトだったわけです
これは、設計者が工事まで把握してなければできないシステムなので設計者=現場監督という考え方になります。

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設計者が設計して、工務店に工事してもうことに問題はありますか?

工事と言うのは、工務店と言う会社でなく、監督さん次第なのです。監督さんが設計者の意図を読み取れれば、良い空間が作れると思うけども、そうはうまくいかない。設計者が監督をする良い意味は、現場で間違っていた時に、それが本当にダメなところかどうかをすぐに判断できる。是正のスピードも大変速い。お客さんからの要望も、設計者=監督という立場なので、コストコントロールもできるので追加に対する成否の判断もできます。


  • HDA

確かに、一流の工務店に依頼するのであれば、私もそれはそれで良いと思います。なぜならば、監督さんがしっかりしているので。現場は、大工と監督しだいだと思っています。

私が分離発注を始めたのは、設計のコストが明確に反映されていないことが多かったためです。工事を考慮して設計しても、それをくみ取られずに、コストが掛かる工事をしてしまっていることが多く、それでは監督の意味がないと思っていました。しかも、注文住宅の工事をやっていると言っても、実際は、それほど得意でない事もしばしば。監督さんは沢山現場をもっているから、図面を把握している時間もない。結局は大工と私共の設計で詳細の打ち合わせをする事になります。これって、ほぼ分離発注と同じなんですね。そういった流れから、必然的にこのシステムで住まいつくりを始めました。私も、芳賀さんも、行きつく先は、無駄の排除なのかもしれません

 


追加工事はやだ、でも欲しい

ハウスメーカーと工務店は得てして、追加工事が高い。それは、お客さんに追加してほしくない。工期の変更が起きるのでやめてほしいというのが本音。これは現場レベルの話。経営サイドでは追加工事は一番儲けられるので欲しい。やめることは少ないですから。その辺のチェックをでいるというのもオープンの良さ。できるのかできないのかを、お客さんに提示できます。お客さんにとって変なコストが掛かることは防げるという事。

  • HDA

今の話だと良い事だけけのような気がしますが、そうではない点もあります。追加工事は様々な手配があったり工期が狂ったり、手間が増えるわけです。そのあたりは本来監督さんが携わって、収集を付けていました。分離発注だと誰が手配するんだよって話になったりします。だから私は大工さんは本当に大事だと思います。大工さんは現場が始まるとおそらく一番長く携わる職人さん。すべての作業は大工工事の進捗で決まるといっても過言ではございません。だから、大工と我々の連携はもっとも大切だと思います

そうですね。オープンの悪いところと言うか弱点は、本来工務店やメーカーがになう雑務を誰がやるかという事。これが宙に浮いてしまう。どういう事かと言うと。基本的には、施主と職人の直接契約、契約書が15~20になるけども施工範囲と言うものが書かれていて、工事と工事の橋渡し的雑務が、上手くいかないことがあります。
それはそのままではうまく進まないので、誰がやるのかというと、マネジメントを担っている建築家と、大工が行うわけなのですが、工事に傾倒していない場合には苦労するかもしれません。

 


建築家の横のつながりと適正価格

  • HDA

イエヒトの集まりは、それぞの得意分野を横でつないでいるので、工事の事、法律の事、ローンの事、デザインの事などクォリティーの高いものを作れることもメリットですね。

そこでコストの話で、私は適正価格の家づくりは分離発注のいいところの一つだと思っています。商社にもいた芳賀さんに聞きます。適正価格とは。。。

建築業で、その質問を答えることは非常に難しいですね。


  • HDA

おっしゃる通り。難しいのです。建築以外で考えると、物の原価は、例えば、缶コーヒー120円が20円くらい、食事は30%が原価、といった感じです。建築は、一昔前は、建築費の50%が工務店やメーカーの利益だった時代もありましたが、今では15~25%くらいですかね。メーカーさんは30%&以上かな。他の商売から比べると利益率は非常に低いですが額が大きいですね。もう少しバラすと、職人さんの価格はどうかと言う話になります。

わたしが思う適正価格が、みんなの適正価格だとは思わないのです。それは、内情を知っているので、指値はどんどんできます。しかし、それは、クォリティーの良いものができるかとは別問題です。ですから非常に難しい問題です

  • HDA

そうすると。、お施主さんはどのように判断したらいいですか???


正直、この日本において、お施主さんが適正な価格を判断することは難しい。

でもその答えに少しでも、近づけようとするならば、分離発注のやり方は、家の値段の出し方がわかる方法法の一つだと思う。

専門業者から直接の金額を見ることができるので、わかりやすいと。

  • HDA

私達が考える適正価格は、ローコストメーカーにすると高いかもしれません。しかし、注文住宅という商品で考えると決しておかしい値段ではありません。だから、この設計者の集まりでコスト協議をするわけです

いずれは、注文住宅のコスト表ができると思います。

業者さんからの金額が、高すぎることがないように、我々がいて、その部分のマネジメントを担います。設計者で、見積もりの勉強会をやって、そもそもこの工事の単価はどうかという事を話し合って知識の蓄積をしています。工務店だと、決まった職人さんばかりの所もあり、そういう所は、価格の正当性は薄くなっていることもあります。

  • HDA

日々勉強ですね。

注文住宅は、思考を停止させてはいけないのです。規格化は、良い面もありますが、最もいけないことは使う人が思考を停止できるといういこと。誰でもできるという事なのです。

思考を停止させないことが注文住宅ではないかと思っています。

全くです。どうもありがとうございました